今日はというか、今日も長文になります。ブログと言うよりレポートです。
材料や商品などの輸入を行っている会社の多くが為替デリバティブ(通貨オプション)を行っていますが、そのデリバティブで多額の為替差損が出ているご相談が、昨年後半ごろ見受けられるようになり、昨年暮れには相当数のご相談がありました。
私のセミナーでもこの件についてのお話をしていますが、ここで、改めてこの為替デリバティブへの対策をお話したいと思います。
そもそも、為替デリバティブをやっていて、為替差損によって資金繰りが苦しくなったというご相談がほとんどですが。
この対策を考える前に、本当に苦しくなった原因が重要です。
なぜなら、その原因によって対策も違いますし、金融機関への要請の仕方(交渉の仕方)も違うからです。
- デリバティブが、資金繰りが苦しくなった本当の原因なのか?
- あるいは、もともと資金繰りがギリギリで、その上にデリバティブが加わって、さらに悪化したのか?
- すぐに資金繰りが破綻するわけではないが、このような円高が続けばいずれ資金繰りが苦しくなることは間違い
ないという状況なのか?
様々な状況に全てに対して、このブログで書くのは限界がありますので、ここでは、2つめのもともと資金繰りがギリギリで、その上でデリバティブが加わって、さらに悪化したと言う場合の対策を簡単にまとめておきたいと思います。
この状況には2つの問題点があります。
一つは、もともと資金繰りが苦しかったと言うこと。
二つ目は、為替差損でさらに苦しくなったと言うこと。
このような場合、為替差損で苦しくなったので何とかしてくれと金融機関に話をしたとしても、おそらくこう言われると思います。
「われわれ金融機関もできる限りのことはしますが、その前に、まず利益を出すような取り組みをしていただくことが先決ではないですか? いくら我々が協力しても、もともとの赤字までは支援することはできませんし、その赤字を何とかするという道筋を示していただかないとデリバティブもなかなか協力しにくいんです」
実は、その通りなんです。
まずは、会社としてどう収支改善を進めて行くかを具体的に計画化し、その上で為替差損分については、こうして欲しいという要請をしなければ、話は進みません。
仮に進んだとしても、何も根本的に解決されていませんから、結局、会社の資金繰りは苦しいままです。
為替差損の対策には、どのようなものがあるかを知っていただくと、さらに理解していただけると思います。
為替差損が出ているデリバティブの対策には、大きくは次の3つしかありません。
- 全ての為替デリバティブ(通貨オプション)契約を解約する
- 一部の為替デリバティブ(通貨オプション)契約を解約する
- 差損分を追加融資してもらう
1番目の全てを解約する場合、違約金が発生します。
しかし、多くの場合、企業にその違約金を支払う資金余力はありません。
こういうときは、どうするか?
違約金分を新たに借りて、それで違約金を支払うのです。
そうです。
違約金を借り入れに付け替えるということです。
しかし、ここで、また新たな問題が生じます。
違約金支払いのために新たに借りた借り入れは返していけるのか?
おそらく、すでに資金繰りに苦しくなっているわけですから、今まで借りている返済自体も返済猶予などの対策を検討しなければいけない可能性もあります。
今までの借入は返済猶予し、違約金の借り入れは返済をする。
これでは資金繰りは楽になるわけがありません。
楽になるどころか、逆に違約金が多額すぎて苦しくなることもあり得ます。
私のクライアントの中には、違約金が十数億という会社もあります。
ここまで多額になると、通常の返済に加えてこれを返していくことは非常に難しいと言えます。
違約金のために借りたお金の返済と通常の返済の両方をどうするかを考えることが重要と言うことです。
それには、やはり、収支の改善が大事です。
利益を増やすことが大事だということです。
2つ目の一部解約をしても違約金が発生することは同じです。
全部解約よりは、違約金が少ないために、そのための借入額が少なくなると言うことです。
しかし、抱えている問題は、全部解約と全く同じです。
さらにそれに加えて、もう一つ問題が生じる可能性があります。
それは、解約せずに残した契約分を円転したときに、為替差損が生じる可能性があると言うことです。
解約しなかった分全てを実際に使用できればいいですが、もし、使えずに残った場合は、外貨のままで置いておくか、円転することになります。
その時点で、また、為替差損が生じる可能性があると言うことです。
ということは、この為替差損分の借入をしてもらえれば、キャッシュフロー上は、財務収支トントンになります。
3番目の差損分を融資してもらうことも重要な対策になるということです。
まとめると、会社の状況に合わせて。
- どれだけ解約するのか
- 解約する場合、違約金は支払えるのか、その分の融資を要請するのか
- 解約した場合、差損は発生しないのか
- 差損分は、経常収支で吸収できるのか、支払えるのか
- 支払えない場合、その分の融資を要請するのか
ということです。
そして、最初の方でお話しした「収支改善」が、やはり重要になってくるのです。
- 違約金分借り入れをどう返済するのか
- 通常の借り入れ返済は、返済を続けられるのか
- 差損分の融資は、どう返済するのか
こういうことを明らかにしておかないと、目先の為替差損を何としかたに過ぎず、資金繰りがあまり改善されないことにもなりかねません。
また、金融機関も為替デリバティブの支援を積極的にしてくれないことにもなりますし、何より、会社と金融機関と間の信頼関係が崩れてしまい、さらに経営が不安定になることさえも考えられます。
為替デリバティブに関しては、短期的な近視眼的な判断をするのではなく、中長期的な視点から、いくつものシミュレーションを行い、判断するようにしていただきたいと思います。