今日は、不正会計、粉飾から立ち直った会社の中から1社を取り上げて考えてみたいと思います。
不正会計、粉飾はどのような理由があれやってはいけない行為です。
まして、粉飾された資料で融資を受けることは、金融機関を騙す行為であり、金融機関から支援を断ち切られ告発されることもあります。
あるサービス業の会社の事例です。
数年にわたって、粉飾した資料で融資を受けていました。
その理由は、実態は赤字で資金繰りが苦しいからです。
融資を受けると返済が伴います。
赤字にもかかわらず返済負担が増えると、さらに資金繰りが苦しくなります。
そこで、また粉飾をして融資を受ける。
また、返済が増える。
粉飾を行う企業の多くは、このような悪循環で粉飾をやめることができなくなっていくのです。
とは言え、このような悪循環がいつまでも続くわけはありません。
粉飾で借り入れがずっとできるはずがないのです。
金融機関がこれ以上貸せないとなると、
そこで借りることができずに、大抵はリスケになります。
リスケを金融機関に要請する際、
第三者による財務実態調査(財務DD)を金融機関は求めます。
その結果をもとに経営改善計画を作成し金融機関に説明する必要があります。
これらを行うときに、必ず過去の粉飾が明るみになるのです。
この事例会社の粉飾が明らかになったのは、内部通報です。
辞めた役員が、会社が粉飾していることを金融機関に通報したのです。
この役員は経理担当でした。
その翌朝一番で、メインの金融機関から社長に電話がかかってきました。
話があるので、今すぐに支店まで来て欲しいとのことでした。
社長が急いでメインバンクに行くと。
その場で、粉飾のことを持ち出され、それが事実なのかと問い正されたそうです。
社長は、事実だと認め、謝罪し、理由を説明したとのことです。
それに対しメインバンクは、
その場で今後一切の貸付を停止、月末までに短期長期全ての借り入れ金の返済、それができないときは口座の凍結をすると言ったそうです。
メインバンクは、一切支援しないことを事実上表明したのです。
このままでは経営破綻です。
口座を凍結されると、資金移動ができなくなり支払もできません。
また、借り入れ全額を返済するだけのお金は、全での金融機関の残高で不足している状況でした。
翌日、もう一度面談することで、その日は終わったそうです。
このメインバンクとの面談の間に、他の全ての金融機関からも大至急会いたいと連絡が入っていました。
急いで電話をすると、どの金融機関も「すぐに来てほしい」ということです。
その日と翌日に、社長一人でメイン以外の金融機関に行ったそうです。
金融機関から言われたことは、
「我々を騙してたんですね。すぐに借り入れ全額を返してほしい」
「詐欺で警察に告発する予定だ」
「許せない。潰れてほしい」
「こういうことをする会社は存在する価値はない。すぐに破産してはどうか」
「今後、借り入れ全額を返済したとしても、御社が改善したとしても弊行は一切支援しない」
ここから、私どもが関与することになります。
改めて、メインバンクに社長と訪問し、
「この会社を、今潰すのは簡単なことです。
口座を凍結すればこの会社は簡単に潰れます。
それもやむを得ないくらい大きな問題を起こしたのも事実です。
でも、潰すのはこの後でもできるわけですから。
まずは実態を明らかにして、その上でメインバンクとしてどう対応するかを決めてもいいのではないですか。
弊社と税理士で至急取りかかります。
取り急ぎ、実態のBSと粉飾に至った経緯を10日以内にお伝えします。
それまで、一旦待っていただけませんか」
というような話をし、支店長は、即断できないので、その日中に連絡をするということで一旦話は終わりました。
そのあと連絡があり、
「待ってもいい。
ただし、弊行からの資金移動については控えて欲しい。
どうしても資金移動の必要があれば、いつ、どこに、いくらを移動、送金するのかを教えてほしい。
事前に言わずに異動したことがわかったときは、口座を凍結する」とのことでした。
そのあと他の金融機関にもすぐに訪問し、メインバンクは実態を把握してから対応するとなったので、お宅も待ってほしいと要請し、紆余曲折はありましたが、全行実態解明まで待つということになりました。
実は、このあともさらにいろいろな問題が起きるのですが。
長くなってきましたので、一旦、ここで終わらせていただきます。
続きは、〜粉飾からの再建 2〜で。